「世界の変わった給付金制度」第1回は、フィンランドの「育児箱(ベビーボックス)」です。赤ちゃんが生まれる前に、国から大きな段ボール箱が届きます。
中には生まれてくる赤ちゃんのための用品がぎっしり。そして驚くことに、その箱自体が赤ちゃんの最初のベッドになります。
箱の中身は?
箱を届けるのは、フィンランドの社会保険機関Kela(ケラ)です。中身は毎年見直されていて、最近のものでは、肌着や防寒着などの衣類、寝袋、寝具、フード付きバスタオル、爪切りや歯ブラシといったケア用品、絵本、おしゃぶりなど、およそ40から50品目が入っています。
箱の底には専用のマットレスが敷けるようになっていて、箱そのものをベビーベッドとして使える設計です。

対象は、フィンランドに住むすべての妊婦さんです。所得による制限はありません。養子を迎える家庭も対象です。
現金でももらえる。それでも約9割が箱を選びます
実はこの制度、「箱か、現金か」を選べます。現金で受け取る場合の金額は、長らく170ユーロ(日本円で約3万円)でした。2026年からは210ユーロに引き上げられています。
それでも、Kelaの公表では約87パーセントの母親が現金ではなく箱を選ぶそうです。理由のひとつは、箱の中身を自分で買いそろえると現金の額より高くつくこと。もうひとつは、毎年変わるデザインや中身を楽しみにする家庭が多いことだと言われています。
始まりは1938年。条件は「健診を受けること」
制度が始まったのは1938年です。当時のフィンランドは乳児の死亡率の高さと出生数の低下に悩んでいました。最初は低所得の家庭だけが対象でしたが、1949年からは所得に関係なく全員が対象になりました。
この制度で面白いのは、受け取るための条件です。
妊娠が154日以上続いていることに加えて、妊娠の早い時期(目安として妊娠18週まで)に、医師の診察か母子保健クリニックの健診を受けていることが必要です。「箱がほしいから、早めに健診に行く」。
給付と健診を結びつけたことで、妊婦健診の受診が広がり、母子の健康を守ることにつながったと評価されています。
日本と比べると
日本にも、自治体が現物を配る仕組みや、面談を受けて給付を受ける仕組みはあります。それでも、国中どこでも同じ箱が届き、多くの家庭が現金より現物を選ぶという光景は、日本ではあまり見かけません。
「何が必要か分からない」という出産前の不安に、国が「まずこれだけあれば大丈夫」という形で答える。フィンランドの育児箱は、金額の大きさではなく、設計の工夫で長く愛されている制度だと言えそうです。
出典・参考リンク
- Kela(フィンランド社会保険機関)「Maternity package or cash benefit」
- Kela「Maternity grant to be increased to EUR 210」(2026年の引き上げについて)
- Kela「最新版の育児箱の配布開始について」
- フィンランド外務省 Finland.fi「Eighty years promoting a good start for every child in Finland」
- 写真:GrumpyFinn(Wikimedia Commons、CC BY 3.0)/Kelaの育児箱を受け取る母親の写真も同じ出典です
金額の円換算は概算です。制度の内容は2026年11月時点の情報に基づきます。



コメント
コメントは承認後に表示されます。個別の給付が受けられるかどうかについてはお答えできませんので、お住まいの自治体の窓口にご確認ください。政治的な批判や、特定の個人・団体への誹謗中傷は掲載しません。